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紙幣に描かれた英雄 その3

こんにちは、ジャカルタで暮らす会社員のサントソです!
前々回から紹介していますルピア紙幣に描かれているインドネシアの英雄特集、今回が3回目です。Rp100,000~Rp5,000までは紹介し終わっているので、今回はRp2,000とRp1,000の人物を紹介したいと思います。まずはRp2,000札です。

Rp2,000札
灰色のような緑色のような色をしたRp2,000に描かれている人物はモハンマド・フスニ・タムリン(Mohammad Hoesni Thamrin)氏です。タムリンって通りの名前にもなっているあのタムリン?と思うかもしれませんが、そうです。あのJalan M.H.Thamrinはこのタムリン氏の名前を付けているのです。

タムリン氏はバタビア(現在のジャカルタ)生まれで1919年にバタビアの市議会議員、1929年には副市長となった人物です。当時の市長はオランダ人だったので、インドネシア人でいえばバタビアで最も偉かったことになります。その後1927年に国民議会に任命されます。そして1939年にある提案をします。それまでオランダ語の「Nederlands Indie」、「Nederlands Indisch」、「Inlander」(オランダ領インド、オランダ領インド人、オランダ領インド人)と呼ばれていたのを民族主義的な用語である「Indonesia」、「Indonesisch」、「Indonesia」(インドネシア、インドネシア人、インドネシア人)に置き換えようと言ったのです。今でこそ当たり前の呼び方ですが、オランダ政府から反感を買い、1941年に政治情報局により当時の日本帝国に機密情報を提供していた疑いで逮捕されてしまいます。逮捕の5日後、心臓発作で亡くなってしまいます。さぞかし無念だったことでしょう。。。彼の提案があったからこそ、インドネシアやインドネシア人が独自の呼称を得ることができたのですね。現在、彼はTPU KARET BIVAKという所に眠っているのですが、シティ・ウォークからカレット駅の間に見る大きな墓地ですね。今まで数えきれないほど墓地の前を通っているので、こんな近くに彼のお墓が有ったのかと驚きです。続いて紙幣の裏を見てみましょう。

Rp2,000札の表(インドネシア銀行ウェブサイトより)Rp2,000札の表
(インドネシア銀行ウェブサイトより)

裏に描かれている踊りはピリン・ダンス(Tari Piring)と言って西スマトラ州ミナンカバウ族の間で踊られるダンスです。両手にお皿を持ち、落とさずに踊るのです。元々は豊作を感謝するための儀式で踊られていたのですが、いまではそれ以外のセレモニーでも踊られます。私も取引先のセレモニーや知り合いの結婚式で何回か見たことが有ります。その左に描かれているのは西スマトラ州アガム県に有るシアノク渓谷の景色です。上に描かれている花はアチェ州を象徴するキンコウボク(Bunga Jeumpa)というRp10,000と同じモクレン科の花です。現地の言葉で「Bungong Jeumpa」という歌も有りますよ。

Rp2,000札の裏(インドネシア銀行ウェブサイトより)Rp2,000札の裏
(インドネシア銀行ウェブサイトより)

Rp1,000札
お次は黄色をしたお札、Rp1,000札です。表にはこのシリーズ唯一の女性が描かれています。名前はチュ・ニャ・ムティア(Cut Nyak Meutia)です。「民族覚醒の母」や「女性解放の先駆者」と言われているカルティニ(Kartini)氏やアチェ・ゲリラ指導者の一人として有名なチュ・ニャ・ディン(Cut Nyak Dhien)と並び「インドネシア女性の英雄」と言われている人物です。チュ・ニャ・ディンと同じくアチェ・ゲリラを指導しました。1910年にオランダ軍との戦いに敗れ命を落としましたが、彼女の功績がたたえられ、国の英雄となりました。

Rp1,000札の表(インドネシア銀行ウェブサイトより)Rp1,000札の表
(インドネシア銀行ウェブサイトより)

裏に描かれている踊りはパプアとマルク地方で踊られるティファ・ダンス(Tari Tifa)で、ティファという片手で持てるくらいの太鼓を持って踊ります。石器時代からゲストを迎えるとき、収穫のときに踊られているようです。バンダ・ネイラ(Banda Neira)の景色です。そびえる山はバンダ火山(Gunung Api Banda)でしょうか。19世紀半ばまではバンダ・ネイラが世界のナツメグの世界的な産地だったと言われています。上にはマルク地方を象徴する洋蘭の一つDendrobium bigibbum (Anggrek Larat)とう花が描かれています。

Rp1,000札の裏(インドネシア銀行ウェブサイトより)Rp1,000札の裏
(インドネシア銀行ウェブサイトより)

以上がインドネシアで流通している紙幣(2022年版)に描かれている人物についてでした。彼らの貢献があったから今のインドネシアが有るのですね。今までは名前も知らなかったのですが、調べてみると今まで聞いていた空港や道路の名前に付けられていて身近に感じました。裏に描かれている踊りや場所、花も初めて知ることが多くて勉強になりました。描かれている場所の中でもまだまだ行ったことのないところが有るので、インドネシアにいる間に1回は行きたいなぁと思います。次回もお楽しみに!Sampai Jumpa(サンパイ ジュンパ=またね)!