インドネシア入門

パンチャシラって何? その2

こんにちは、ジャカルタで暮らす会社員のサントソです!
前回、パンチャシラについて5つのうち、2つの理念をご紹介いたしました。今回は残りの3つを中心にご紹介します。どうぞ、お楽しみください。

壁に飾られたガルーダ・パンチャシラのエンブレム壁に飾られたガルーダ・パンチャシラのエンブレム

3つ目の理念を紹介します。エンブレムの右下、赤い背景に黄色の鎖が描かれたものは
「公正で文明化された人道主義(クマヌシアアン・ヤン・アディル・ダン・ブルアダッブ:Kemanusiaan Yang Adil dan Beradab)」です。人間間の平等、権利、義務を象徴しています。個人が平等に気を付け団結すれば、差別の無い公正で文明的な社会になることを象徴して鎖が描かれています。描かれている鎖にも意味が有って、チェーンの繋がりを構成している一つ一つ(鎖素子というらしいです)のうち、正面が見える円い形状のものが女性、長方形のものが男性を表し、それらがつながることによって強いチェーンを作っていることを表しています。

こちらのシンボルの色にも意味が有ります。チェーンの金色は栄光、国家の偉大さを意味しています。背景の赤色は強さと勇敢を意味しています。チェーンの力強さを表すにはぴったりの背景ですね!

次、左下の白い背景に稲と綿が描かれたものは
「全インドネシア国民に対する社会的公正(クアディラン・ソシアル・バギ・スルル・ラキャッ・インドネシア:Keadilan Sosial bagi seluruh Rakyat Indonesia)」です。シンボルの稲と綿は、人間が最低限必要としている食料と衣類を象徴しています。食料と衣類はパンチャシラの第 5 原則の主な目標である繁栄を達成するための主要な要素の1つとされています。 食料とは食物消費の必要性が満たされることを意味し、衣料品とは衣服の必要性が満たされることを意味します。日本で言う「衣」「食」「住」のうち、「衣」「食」を指しているということですね。

シンボルに描かれている稲は黄色、綿は白と緑で表されています。稲の色が黄色ければ、稲刈りの準備が整ったことを示します。 綿の白い色は平和を象徴しています。一方、綿の緑色は豊饒、新鮮さ、生命を表します。

最後、左上の赤い背景に牛の顔が描かれたものは
「協議と代議制における英知に導かれた民主主義(クラキャタン・ヤン・ディピンピン・オレ・ヒクマッ・クビジャクサナアン・ダラム・プルムシャワラタン/プルワキラン:Kerakyatan Yang Dipimpin oleh Hikmat Kebijaksanaan, Dalam Permusyawaratan / Perwakilan)」です。この理念だけ文がめちゃめちゃ長いんですよ!他の4つは頑張って覚えたのですが、この理念だけ覚えるのを挫折してしまいました。。。こちらはインドネシア国民が合意に達するために他人を強要することなく、常に熟議を行わなければならないことを意味しています。雄牛の頭のシンボルは、高い社会性を持ち、物事を話し合って熟考することを好んで集まる人たちを表しています。その他、インドネシア人の強さと勇敢な態度も表しています。この理念の中に書いてある「プルムシャワラタン/Permusyawaratan」は協議の意味になりますが、「ムシャワラ/Musyawarah」とは「合意によって意思決定を行う」という古くから有る習慣です。皆が納得いくまで話し合って物事を決めましょうということですが、今でも大変重要な考え方です。例えばビジネスにおいて自分が納得いかないままプロジェクトが進むのをよしとしない方が多いため、進めるにあたり予め話し合って納得を得ることが必要です。日本でも大切ですが、インドネシアにおいては特に注意しなければいけません。

雄牛の頭は白と黒で表現されます。黒い色は、物事に対する強さ、謙虚さ、真剣さを象徴します。一方、白は知恵、誠実、平和を表します。

以上、5つの理念を簡単にご説明いたしましたが、皆さん、ガルーダが足で何か掴んでいることに気が付きましたか?(ビネカ・トゥンガル・イカ:Bhinneka Tunggal Ika)と書かれたリボンのような、横断幕のようなものを持っています。「多様性の中の統一」という意味で、宗教だけでなく、民族、文化、言語の多様性を尊重しつつ、一体になろうというものです。前回の記事にあった「インドネシアの統一」と繋がるところが有りますね。この理念はインドネシアで生活するにあたり必ず聞いたことがあるのではないかと思います。当時の政治家であり、法律家であったモハマド・ヤミン(Mohammad Yamin)によって提案され、今日でもインドネシア国家を団結されるために使用されています。

私はこの「多様性の中の統一」という言葉がとても好きで、たとえ自分が皆と違う考えを持っていても受け入れてくれるような、インドネシアの寛容さを感じることができます。この言葉が浸透しているのか、インドネシアの方々は外国人に対して優しかったり、こちらの主張をちゃんと聞いてくれたりします。この理念は私がインドネシアに惚れて住んでいる理由の一つでもあります。

前回の記事でもありました通り、このパンチャシラが制定されたのは1945年8月ですが、実際に同年6月1日にスカルノ前大統領の演説で初めて「パンチャシラ」という名前と、その内容を説明しました。このパンチャシラが誕生したことを祝して、ジョコ・ウィドド現大統領(2024年10月20日任期満了)が2016年にパンチャシラの日を制定しました。パンチャシラの日は毎年6月1日となり、祝日となります。毎年6月1日はただ休むだけでなく、パンチャシラが生まれた背景や意味を深く調べてみるのもいいですね。

それでは、次回もお楽しみに!Sampai Jumpa(サンパイ ジュンパ=またね)!